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悲しみの歌 [Kanashimi no uta]

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生きることの悲しみ。我々の生に内在する本質的な悲しみに向けられる眼差し。
『海と毒薬』から二十年後に書かれた「後日譚」。

米兵捕虜の生体解剖事件で戦犯となった過去を持つ中年の開業医と、正義の旗印をかかげて彼を追いつめる若い新聞記者。表と裏のまったく違うエセ文化人や、無気力なぐうたら学生。そして、愛することしか知らない無類のお人好しガストン……華やかな大都会、東京新宿で人々は輪舞のようにからみ合う。
――人間の弱さと悲しみを見つめ、荒涼とした現代に優しく生きるとは何かを問う。

本文より
「疲れてたでは三人の捕虜を殺した言いわけにはならないと思いますが……もっと、正直に答えてくれませんか」
勝呂(すぐろ)医師は長椅子から悲しそうな眼をあげて、若い新聞記者の怒った表情を見た。自分は何度、この質問を受け、この答えをしたことだろう。B級戦犯として拘置所にいた時、弁護士になってくれた二世の将校からも、それでは返事にならぬと叱られたものだった。結局、その二世は勝呂を研究室のたんなる下っ端としてこの実験に従わざるをえなかったと言う説明を作ってくれたのだが……

本書「解説」より
この作品は、中年の、中年以降の世代の、文学である。五十何歳かの遠藤周作が書いたから、というだけではない。この作品の底に澱んでいる滓(おり)のような悲しみをあじわうには、読者の側にそれ相応の生の体験を、生そのものから分泌する悲しみの体験を、刻み込んだ感受性が要求されるからだ。
おそらくこれは「知」の敏性(デリカシイ)で「鑑賞」する作品ではない。そうではなく、ながい人生を渡渉し、人間の裏と表の実情をふたつながら知悉した感性でもって「共感」する作品なのだ。
――遠丸立(文芸評論家)

遠藤周作 (1923-1996)
東京生まれ。幼年期を旧満州大連で過ごす。神戸に帰国後、12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て1955年「白い人」で芥川賞を受賞。結核を患い何度も手術を受けながらも、旺盛な執筆活動を続けた。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品や歴史小説、戯曲、映画脚本、〈狐狸庵もの〉と称されるエッセイなど作品世界は多岐にわたる。『海と毒薬』(新潮社文学賞/毎日出版文化賞)『わたしが・棄てた・女』『沈黙』(谷崎潤一郎賞)『死海のほとり』『イエスの生涯』『キリストの誕生』(読売文学賞)『侍』(野間文芸賞)『女の一生』『スキャンダル』『深い河(ディープ・リバー)』(毎日芸術賞)『夫婦の一日』等。1995年には文化勲章を受章した。

First published June 1, 1981

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About the author

Shūsaku Endō

384 books1,049 followers
Shusaku Endo (遠藤周作), born in Tokyo in 1923, was raised by his mother and an aunt in Kobe where he converted to Roman Catholicism at the age of eleven. At Tokyo's Keio University he majored in French literature, graduating BA in 1949, before furthering his studies in French Catholic literature at the University of Lyon in France between 1950 and 1953. A major theme running through his books, which have been translated into many languages, including English, French, Russian and Swedish, is the failure of Japanese soil to nurture the growth of Christianity. Before his death in 1996, Endo was the recipient of a number of outstanding Japanese literary awards: the Akutagawa Prize, Mainichi Cultural Prize, Shincho Prize, and Tanizaki Prize.
(from the backcover of Volcano).

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Profile Image for Ryuta  Fukuya.
73 reviews5 followers
April 29, 2015
This was written as a sequel of 海と毒薬(The Sea and Poison).
As long as I know, there is no translation into English despite 海と毒薬 have.
Main Character of 海と毒薬 Suguro 勝呂 is also one of main characters.
In 海と毒薬 author compared Japanese moral with Western one and critisized weakness of Japanese conscience.
After long time from war, he might have a daubt "Is there absolute virtue ?".
In the Bible there is a word "Vengence Is Mine.".
But Mr. Endo's God never judge only weeps for his Sin.
He argued the Japanese have been able only to interplet the concept of Unique God like this.
Profile Image for Meg.
9 reviews
October 15, 2023
遠藤先生の作品のなかでも心の大切な場所にしまっている一冊。1960年に彼が発表した『海と毒薬』の続編という本書。『海と毒薬』から16年後に原題『死なない方法』で「週刊新潮」への連載で発表された。『海と毒薬』の主人公であり、米兵捕虜の生体解剖事件で戦犯となった過去を持つ医師 勝呂がこの物語にも登場する。正義感を追求する新聞記者、怠惰な学生、表と裏の顔を持ち権威や世間体が全ての大学教授。そして人に寄り添い無償の愛を注ぎ続けるフランス人のガストン。東京新宿の大都会で彼らがめぐり逢い関わり合う中で、人々の内面の悲しみと弱さを描き出す。
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遠藤作品のテーマの一つである弱者と彼らの抱える悲しみに寄り添うことが本作にも受け継がれている。良心の呵責からできる限りの慈悲行為は行うものの、自身を弱者として認め、赦されることが無いと諦めている勝呂。高度経済成長期の大都会で誰も気にすらしない、彼の抱える計り知れない深さの悲しみ。その悲しみに真摯に向き合い書き上げるのは心痛む作業だろう。だが、小説家 遠藤周作はそれは私の仕事として悲しみを、弱さを、書き上げた。
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ガストンは神の象徴であろう。勝呂やその他の登場人物たちの、深い救いようの無い悲しみに寄り添っているガストンは、無限の優しさと赦しを人間に贈る救いの存在だと思う。遠藤周作の「母なる神と信仰」というテーマがここにも貫かれている。『ほんとに、あの人、かなしかった。かなしい人でした・・・。天国であの人のなみだ、だれかが、ふいてますです。』の部分ではガストンの、勝呂の哀しみに寄り添う愛と優しさに涙した。
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本作は多くの人の人生に寄り添ってくれる一冊だと思う。いろいろな悲しみが書かれているが、読者が辛いことも幸せだと思うことも年と人生経験を重ねながら読むことで、それらの悲しみに心の深いところで共感できるだろう。弱者の悲しみに寄り添うためには、人生における失敗や挫折、不運の経験が必要で、だから遠藤周作が本作を続編として世に送り出すまで16年の歳月が必要だったのかもしれない。
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This entire review has been hidden because of spoilers.
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