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424 pages, Paperback
First published January 1, 1997
森博嗣のS&Mシリーズ第5作目となる『封印再度』は、読書本来の「読む面白さ」を強烈に思い出させてくれる一冊です。洗練された文章、確固たる個性を持つキャラクター、そして先の読めない展開が見事に融合し、ページをめくる手が止まらなくなるブラックホールのような吸引力を持っています。
本作のミステリ部分には、良くも悪くも読者を困惑させる仕掛けがあります。終盤まで事件の多重解釈が可能である点や、わずか4歳の子供の不明瞭な言葉が決定的なヒントになるという構成には、見事に騙されたような「モヤモヤとした虚無感」を抱くかもしれません。しかし見方を変えれば、ミステリの枠組みや可能性を自由自在に広げてみせる著者の恐るべき手腕の証明でもあります。
そして何より見逃せないのが、犀川と萌絵の関係性における「超特急の進展」です。これまで徹底して冷徹な「思考機械」としての理系イメージを保ってきた独身教授の犀川ですが、今回は強気な萌絵が仕掛けたとんでもないトリックの前に完全に陥落します。彼が自発的に「婚姻届」を書いてしまうという、これまでの鉄壁のイメージを根底から覆す人間臭い崩壊っぷりは必見です。純粋なミステリとしても、二人の恋愛劇としても極上のエンターテインメントを味わえます。(星3.5評価)