ある意味すごい。ここまで主人公に対する殺意と同情の両方が湧く作品は中々ない。主人公が本当に救いようのないクズ。最初から最後までクズ。
だが、作品自体は丁寧で繊細。東京のど真ん中で精神が少しずつ壊れていく感覚を丁寧に描いてる。自己表現とは、夢とは、演劇とは、恋愛とは、ただのエゴ?
少なくともサキに対する主人公の気持ちは腐ったエゴ。サキは彼の空っぽな人生に光をもたらす存在であり、「沙希」ではない。劇場はどうなのだろうか?生き甲斐とは、全てエゴ?エゴだから全て捧げられるのかもしれない。
演劇の息苦しさは研究に似ていて、主人公が感じる劣等感と世間に対する嫌悪感と後ろめたさと嫉妬は、共感できる。淡々としなければやっていけない。嫉妬から逃げられない。
主人公の淡々とした語り方と生き方には最初はイライラしたが、慣れると心地良いものかもしれない…
と思いきや、主人公はやはり甲斐性なしのクズだった。サキがこんなに可愛いのに、なんなんお前?なんで泣かせてんの、自分が悪いのに?ただのヒモ?光熱費払えよ……
本当に使えないクズ。
でも、そのクズっぷりが胸に刺さる。胸が痛いけどクズ、クズだけど救われるのを期待、を延々と巡りながら読んだ一冊でした。