chat errant

by shigure

目が覚めたらホテルの一室だなんてよくある話だ。しかし、相手が同姓ともなればまた別の話になる。 玲は必死で記憶の糸を手繰り寄せていた。 金曜日の夜。後輩の送別会。 その後の二次会に三次会……。 と、そこまで思い出した時、一人の人物が脳裏に浮かんだ。 　表と裏。 　どんなに素晴らしい仕事をしていても、中身は腐りきった奴なんて沢山いる。いや、むしろ綺麗な仕事をしている人間ほど一癖も二癖もありそうな奴らばかりだ。 「でも、人の裏はなかなか見破れない」 「そうかしら」 「意外に人の裏を図るのって大変だよ。その笑顔の裏にどんな悪魔が潜んでいるかなんて、そう簡単に見破れるもんか」 　と、洸はそっぽを向いた。 　何か思い当たることでもあるのだろうか。 　わたしは洸の肩を掴み、 「本当にね、あんたなんかと出会うんじゃなかった……」 　と、揺さぶった。 「いきなり何だよ」 　笑って流すところも憎らしい。 「でも、好きよ。あなたに惹かれている自分がいる。それは間違いないと思う」 「おっと、そう来たか」 「たった一回しか出会ってないのに本気じゃないって？　そう言いたいの？」 「今日の玲さӛ

111 pages, Kindle Edition

Published October 16, 2018