Kin26 reviewsFollowFollowAugust 5, 2022*ネタバレあり*これはここでこの本に最初の感想記述となるのねw最近は百合のジャンルにハマっちゃって、百合作品を読む友達もいてこの本を勧められて買うことになった。具体的には本に載ってたイラストを見せてもらっただけで、内容については何も知らなかったせいでふわふわした感じの緩いロマンスだと思い込んだ心境で読み始めたら、的が大いに外れてちょっと驚いた。少し暗い、改めていえばちょっとダークな感じの内容だった。でもそれも悪い意味ではなく、割りと読み応えありそうな気分だった。平均的に5回繰り返される一日の中でどれが採用されるかわからぬ日々を送る、「思い出す」という行為は「過去の追体験」に等しいというほど絶対の記憶力を持つ相沢綾香という少女の物語。人間という気まぐれな生き物と、今日が繰り返されても1日目の今日とった行動を、二日目は取らないだろう生き物と、コミュニケーションを取るのが苦手な少女の物語。親に家から追い出され、友達一人も居なくて、面倒を見てくれるのはいつも気分上々で、気ままで、それでも綾香の面倒を見るからには彼女の人生で一番大事な存在の水瀬優花という従姉妹だけというごく孤独な人生。そんな日々の中に現れる眩しい存在、稲葉未散という少女。高校入学式が何度繰り返されても、綾香に話しかけてくる。人生一人目の友達で、初恋の相手で、そのためには何百万回でも死んで、死んで、死を繰り返して、運命の歯車から助けようと無駄にでも何度も何度も何度も死んで死んで死に続ける価値をかける人となる。運命の袋小路に行き止まりをする未散を救えるようになるのは、人生のもう一人の大切な人の優花の手伝いも不可欠で、繰り返されたその何万年かの記憶が代償でタイムループ解決。正直タイムループのはありふれたネタでちょっと飽きまでしてて、「結局タイムループじゃないか」という気分は完全に拭えないけど、ストーリーにはピッタリあうし、うまく出来てると思う。人付き合いの苦手な少女(魔女)の人としての成長が読んで楽しかった。色々失敗したりして、それでも人生に飽きて諦めかけているにも関わらず新しく太陽を発見したかのように未散に惚れて、こんな人生にも生きがいがあるかもしれないと悟り、さらに従姉妹に叱られ、そして守りたいものがあると自覚して「こんな自分でも役に立てる」と思えるまで成長する綾香の姿は観客として応援せざるをえない。一歩一歩が不安でも構わず進むようになる綾香が凛々しくて立派だと思う。このジャンルにしてはちょっと面白くて、ちょっと違うような内容で主人公で、読むのはとても楽しかった。