オスカー・ワイルドの作品もオーブリー・ビアズリーの挿絵も大好物なので、楽しみにしていた一冊だが、期待通り面白く、あっという間に完読。
史実に基づいたフィクション。オスカー・ワイルドの『サロメ』をさらに印象づけたオーブリー・ビアズリーの挿絵にまつわる魅惑的な空想、ビアズリーの絵が象徴するような、オーブリーの姉、メイベル目線で語られた物語。聖書のサロメも、この物語の中のみんなもどこか狂気を帯びており、誰も幸せになれない切なさが残る。所々挟まれている黒いページは舞台の幕なのか、塗りつぶされた絵なのか、登場人物の腹黒さの表われなのか、作中に漂う暗闇をいっそ深くしている。
しかし、原田マハの型にはまったパターン、研究者やキュレーターがふいに新しい何かを発見して過去にタイムスリップ、というお決まりコースになってしまっていることが残念。想像を掻き立てる素材なのに、そのお馴染みの構造から脱却できていないのは惜しい…。