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女徳 (新潮文庫
瀬戸内 寂聴
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多くの男の命がけの愛をうけて、奔放に美しい女体を燃やして生きた女。
――今は京都に静かに余生を送る智蓮尼の波瀾の生涯を描く。
京都・祗王寺の庵主として静かに暮す智蓮尼は、12歳で花柳界に売られ、愛のあかしに小指を切ってみせるほどの激しい気性をもっていた。赤坂の〝千竜〟としてその艶名をうたわれ、男とのことで数度にわたって新聞を騒がせたのち40歳で得度したのだった……。
すさまじいまでの女の宿業をにないながら、本能のままに生命を燃焼させた女の波乱の半生を、大胆なタッチで描いた長編。
本文冒頭より
燃えたつ新緑を背景にした渡月橋が、フロントグラスの中に、絵葉書のようにおさまってきたころから、車窓をうつ細い雨脚が、またひときわ激しくなった。
朝から霧のような五月雨が降りしきっている天候のせいか、さすがに今日の嵐山に人影は少い。
それでも観光バスの客らしい老女の一団が、なりふりかまわず着物の裾をからげて、ビニールの大ふろしきに二人ずつ頭をよせあい、渡月橋をかけ足で渡っていた。
桂川の清流は、雨脚に濛々(もうもう)とかすんでいる。……
本書「解説」より
作者は現実の智照尼の事蹟を土台にすえながら、作中の智蓮尼を美しい女性の性(さが)の象徴としてとらえ、さらに六右衛門や和三郎を間にすえながら、他方の極に亮子という作者自身の分身を用意して、そこに一つの〝女徳〟の世界を構築する。その意味では亮子の存在は、智蓮尼に象徴される理想像を現実に照応させる鏡の役割をはたしており、歴史のむかしから、今日に到るまで、変りなくくりかえされてきた女の煩悩の姿を浮彫りしようとこころみている。
――尾崎秀樹(評論家)
瀬戸内寂聴
1922(大正11)年5月15日徳島生れ。東京女子大学卒。1957(昭和32)年「女子大生・曲愛玲」で新潮社同人雑誌賞受賞。1973年11月14日平泉中尊寺で得度。法名寂聴(旧名晴美)。1992(平成4)年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、1996年『白道』で芸術選奨、2001年『場所』で野間文芸賞、2011年『風景』で泉鏡花文学賞を受賞。1998年に『源氏物語』(全10巻)の現代語訳を完訳。2006年文化勲章を受章。著書に『かの子撩乱』『美は乱調にあり』『青鞜』『比叡』『手毬』『いよよ華やぐ』『釈迦』『秘花』『奇縁まんだら』『月の輪草子』『わかれ』『老いも病も受け入れよう』『求愛』『いのち』など多数。
Paperback Bunko
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瀬戸内 寂聴
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After taking the tonsure in a Buddhist order, now known as Jakucho Setouchi (瀬戸内 寂聴).
Birth name Harumi Setouchi (瀬戸内 晴美).
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